
不動産運用設計
大きさや色で印象が変わる、マンション購入の判断材料
先日、ポストに投函された中古マンションの販売チラシを見ることがありました。視線を引く場所には大きな文字や目立つ色で販売価格や「駅徒歩5分」といった条件が強調されています。さらに「家具の配置がしやすい」「収納が豊富」「二人並んで身支度が可能なワイドな洗面スペース」といった暮らしを具体的に想像させる言葉も目立ちます。リフォーム時期も同様に、ぱっと見て印象に残る形で配置されていました。
一方で、同じ紙面の端や下の方には、管理費や修繕積立金、駐車場代など、購入後に毎月かかる費用が小さく控えめに載っています。注意して探さなければ見過ごしてしまう可能性があります。
このチラシを見て、「目を引く情報」と「そうでない情報」の扱いの差が、中古マンション購入の判断にどのように影響するのかを考えるきっかけになりました。
まずは直感に訴えるように作られている?
不動産のチラシは、手に取った人の興味を一瞬でつかむことを目的にしているように見えます。過去にも多くのチラシを見たことがありますが、販売価格や現在の家賃でも支払うことができそうな住宅ローンの返済額、リフォーム時期など、「いいな」と感じやすい情報が紙面の中央や上部に大きく配置されることが多いように感じました。背景色を変えたり、文字を囲ったり、明るい写真を使ったりと、直感的に好印象を持たせる工夫が随所に見られます。
一方で、管理費・修繕積立金・駐車場代・長期修繕計画といった、将来の支出や資産価値に関わる情報は、小さな文字で落ち着いた色合いにまとめられているケースもあります。意図的に隠しているわけではなくても、ぱっと見ただけでは気づきにくいこともあるでしょう。
小さな文字の中にも大事な情報があるかもしれない
住宅ローン返済額だけを見れば、負担が軽く感じられることもあるかもしれません。ただ、実際には管理費や修繕積立金、駐車場代などが毎月加わるケースが多いです。
たとえば、返済が月10万円と大きく書かれていても、管理費が1万5千円、修繕積立金が1万5千円、駐車場代が1万円なら、実際の支払いは月14万円ほどになります。月10万円なので、現在の家賃と近く何とか支払えそうだなと感じたとしても、実際は、月4万円が上乗せされることで、支払いが厳しく感じられる金額となることがあります。
こうして数字に置き換えてみると、小さく控えめに書かれている部分が、暮らしや家計の安定に直結することが見えてきます。
色や大きさが印象を左右することも
同じ情報でも、文字の大きさや色によって受ける印象は変わります。明るい色や大きな文字は、無意識に「重要でお得な情報」に見えやすく、小さく落ち着いた色は「補足情報」のように感じられることがあります。
こうした見せ方は広告として自然な工夫ともいえますが、購入するか否かの判断のためには、大きく目立つ部分だけでなく、小さく掲載された情報にも意識を向けることが大切といえるでしょう。
総額で考えるという視点
チラシにある「月々8万円で家賃並み」という表記は魅力的に映りますが、住宅ローンの返済額のみが表示されていることもあります。そこに管理費や修繕積立金、駐車場代を加えると、毎月の支払いは変わってきます。
このようにローン以外の費用を含めて総額で考えることは、自分の判断を一歩引いて見直す方法の一つとなると思います。第一印象や感情の高まりから少し距離を置き、数字の全体像を整理することで、「本当に無理のない計画かどうか」をより冷静に考えられそうです。
まとめ
中古マンションのチラシは、まず直感に訴えるように作られていることが多いように感じます。具体的には、価格、返済額、外観や室内写真、リフォーム時期といった魅力的な情報は、大きな文字や明るい色で視線を引きやすい位置に掲載される傾向があるように思います。一方で、管理費や修繕積立金、駐車場代、修繕計画など、暮らしの実際に関わる情報は、小さな文字や控えめな色で掲載されているようです。
最初の印象は大切ですが、それだけに頼らず、控えめに示された情報にも目を通すこと。そして、ローン返済額だけでなく、管理費や修繕積立金、駐車場代を含めた総額で考えてみることで、より納得感のある判断、将来の自分が支払いに困ることがない判断につながる可能性があります。
それは、自分の直感や思い込みを一度立ち止まって見直す、冷静な行動にもつながるのではないでしょうか。
こうした視点を持って物件選びをすれば、購入後のギャップや後悔を減らし、安心して長く暮らせる住まいに出会える可能性が高まりそうです。
今回の記事が何らかの参考になれば幸いです。
研究者と研究者を目指す方々が、やりたいことをあきらめないでいられることを願って。