
資産形成
状態によって判断は変わる
人はつねに冷静で公平な判断ができるとは限りません。
体調や気分、置かれた状況によって、同じ情報でも受け止め方が変わることがあります。
たとえば、空腹のときにスーパーへ行くと、予定していなかったお菓子や惣菜をかごに入れてしまうことがあります。お腹が満たされているときなら必要ないと思える商品でも、空腹のときには強く魅力的に見えてしまうのではないでしょうか。
このような「状況による判断の揺れ」は、買い物のような日常的な場面だけでなく、お金に関する大きな意思決定にも同じように影響しそうです。
たとえば、貯金が思うように増えず将来への不安が募っているときに「短期間で必ず資産が増える」という話を耳にすると、普段なら怪しいと気づける内容にも気持ちが傾いてしまうことがあるのではないでしょうか。
逆に、余裕のあるときには「そんなうまい話はあるはずがない」と冷静に受け止められるかもしれません。
詐欺が狙う「そのとき」
詐欺をしかける人たちは、人の判断や情報の受け止め方が状況によって変わることをよく知っているような形で近づいてきます。
- 「必ず毎月10%の利益が出ます。元本は保証されています」
- 「この秘密の投資話は、今ここで契約した人だけに紹介します」
- 「あなたの銀行口座を守るために、すぐパスワードを入力してください」
冷静に考えれば不自然な内容でも、不安や焦りで余裕がないときには「本当かもしれない」「今逃したら損かもしれない」と思い込んでしまうことがあります。
こうした誘いに揺れてしまうのは、知識や経験の不足だけが理由ではなく、そのときの気分や置かれた状況が影響しているからかもしれません。
余裕がないときほど「信じたい気持ち」が強くなり、冷静さを保ちにくくなることがあるようです。
自分の状態を点検する習慣
では、私たちはどうすればよいのでしょうか。
大切なのは「どんなに注意していても、失敗や勘違いをまったくなくすことはできない」と受け入れることだと思います。
その上で、自分の状態に目を向け、少しでも冷静さを取り戻す工夫を持っておくことが役立つのではないでしょうか。
具体的には、こんな問いかけを自分にしてみることです。
- 焦っていないか
- 将来への不安が強すぎないか
- 疲れていて考える余裕がないのではないか
- 「今すぐ」と言われて急いでいないか
これらの問いは、特別な知識や経験がなくてもできるものです。
大切なのは「判断する前に、自分の状態を一度立ち止まって確かめる」という習慣を持つことだと思います。
たとえば、大きな契約や投資の話が出たときに、頭の中で「今の自分は冷静だろうか」と問いかけるだけでも、決断を一晩先に延ばす余裕が生まれるかもしれません。
こうした「一拍おく習慣」があると、自分の気分の揺れに気づきやすくなります。気づきがあれば立ち止まることができ、立ち止まることで余裕が生まれます。
余裕があれば、もう一度考える余地ができ、結果として安心につながる判断をしやすくなるのではないでしょうか。
詐欺を遠ざける第一歩
詐欺を避ける方法として「だまされない知識を身につけること」が強調されることがあります。知識は確かに役立ちますが、それだけでは十分ではないと感じます。
どんなに詳しい人でも、焦っているときや余裕がないときには、誤った判断をしてしまうことがあります。
詐欺を完全に防ぐ万能の方法はありませんが、「いまの自分は冷静さを欠いていないだろうか」と点検する習慣は、一つの有効な工夫になりそうです。
大げさな方法ではなく、小さな問いかけを積み重ねることが、結果的に自分を守る第一歩になるのかもしれません。
まとめ
判断は、手に入れた情報だけでなく、そのときの気分や状況にも左右されるものだと思います。
詐欺による被害を避けるために大切なのは、情報の真偽を瞬時に見抜く力だけではなく、「自分はいまどんな状態にあるか」を確かめる習慣を持つことかもしれません。
大きな決断をする前に、ほんの少し立ち止まって自分を振り返ること。
それが、長い目で見たときに安心や納得につながる一歩になるのではないでしょうか。
今回の記事が何らかの参考になれば幸いです。
研究者と研究者を目指す方々が、やりたいことをあきらめないでいられることを願って。